世界文化遺産 三池炭鉱を訪ねて

国内旅

2015年「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」が世界文化遺産に登録されました。短い期間で近代化を成し遂げ産業国家としての地位を築き上げたことは特筆すべきことでした。構成資産は九州を中心に全国8県11市に分布しています。そのうちの一つ、福岡県、熊本県に跨る三池炭鉱とその関連施設を訪ねました。
アクセスはJR・西鉄大牟田駅(福岡県大牟田市)を基点とするのが一般的かと思いますが各施設までの移動は車利用をお勧めします。レンタサイクルを利用する方法もありますが少し遠い施設もありその場合はご自身の体力と相談のうえ行き先を検討する必要があります。
無理をせずレンタカーを利用、まずは市内にある宮原坑を訪ねます。大牟田駅からは10分程度で着きます。

宮原坑は先行する七浦坑や宮浦坑の採炭現場が深くなり坑内水の排水効率が悪化したため明治後期になってさらなる採炭と排水を兼ねた坑口として作られたもの。
ガイドの方が説明をしながら案内してくれます。まずはデビーポンプ室の説明を受けました。

三池炭鉱は地下水が多く課題となっていました。そのため高価ですが当時世界最高性能と言われた英国製デビーポンプを導入しました。ポンプ室の壁の一部が残っています。
次に巻揚機室ですが中に入れます。

手前にあるのが人馬昇降に使うメインの巻揚機で奥にあるのが重量物搬出入用のものだそうです。巻揚機室の次は第二竪坑櫓です。

日本で現存する炭鉱遺跡において最古の鋼鉄製竪坑櫓で先に完成した第一竪坑櫓は木製だったとのことです。
次に炭鉱専用鉄道敷跡を案内してくれます。

各坑口を結び三池港まで延伸され側線も含めると150kmにも達したとのことで、石炭や炭鉱資材の運搬を担いました。
ガイドさんの案内は終了、「ゆっくり見ていって下さい」との言葉をいただきもう一度ゆっくり回りました。ポンプで汲みだした水の排水路を見学し反対側にも回ってみました。

ガイドの方にお礼を言い宮原坑を後にします。
次に万田坑を訪ねました。熊本県荒尾市になりますが宮原坑からは車で10分程度で到着します。竪坑櫓や巻揚機室のほか事務所や職場等も残っています。見学は有料になりますが資料の展示室も作られています。

中に入ると順路を書いた地図を渡してくれます。ガイドの方が数人いてそれぞれの持ち場で説明してくれます。
順路図にしたがい巻揚機室を見学します。

宮原坑にもありましたが人員用と重量物用の二つがあります。
巻揚機室の次は職場といわれる施設を見学します。

坑内で使用する機械類の修理や工具を作るための施設で昭和初期に建設されたものだそうです。「ご苦労さん」の文字が見えます。
職場の次は事務所(旧扇風機室)、倉庫及びポンプ室を見学します。

事務所には坑内換気を行うため巨大な扇風機が設置されていましたが閉坑後は事務所として使用されていたもの。倉庫及びポンプ室はこちらも建設当初は坑内換気を行う扇風機が置かれていましたがその後は予備の消火器を置く倉庫や坑内から汲みあげられた水を送るポンプ室として使用されていたようです。
次に第二竪坑坑口を見学します。 

坑口の横にケージが置いてあります。このケージに25人が乗っていたというのは驚きです。危険と隣り合わせの日々、作業員の方々はどのような気持ちでこのケージに乗り地下深くまで入っていったのでしょうか。
外に出て櫓を見た後選炭場、第一竪坑口を回って終了します。

万田坑は残っている施設が多く当時の炭鉱の様子に近づける気がします。
万田坑の次は三池港(大牟田市)に移動します。車で15分程度といったところでしょうか。

石炭の積出のために作られた港で干満の差が大きい有明海で干潮時でも大型船が航行できるよう閘門(こうもん)施設を有しています。閘門とは水位の異なる水面をもつ運河や水路に設けられる船を通航させるための施設のこと。
三池港展望所に着く頃には日が暮れてきたので翌朝もう一度訪ねることにしました。
翌朝三池港展望所と旧長崎税関三池税関支署を訪ねました。

税関は三池港開港と同時に明治41年(1908年)開庁、明治期の税関庁舎が残っているのは貴重だそうです。

世界文化遺産三池炭鉱とその関連施設を訪ねました。スタートが遅くなりまた途中道に迷ったこともあり日没となりましたが、今回の行程で約3時間程度の行程かと。他にも石炭産業科学館や宮浦石炭記念公園といった施設があり時間が取れれば訪ねられたらいいと思います。
各施設で説明を聞いたり設置されている説明書きを見ていると当時の方の苦労が伝わって来ます。同時に大変な困難を乗り越え短期間で急速な近代化を成し遂げた偉大な先人達に頭が下がる思いを強くしました。日本の近代化を知る上では是非とも見ておきたい遺産かと思います。(各種交通機関、各施設等の情報は公式HP等で最新のものをご確認ください)